排水処理って何のためにあるの

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排水処理って何のためにあるの

お役立ちコラム

2021/08/31 排水処理って何のためにあるの

排水処理って何のためにあるの?

工場で生産ラインを稼働させると、多くの工場で、そのままでは川や海に流すことのできない「工場廃液」が生まれます。

「工場廃液」は、目に見える汚れだけでなく、透明に見えても水中に溶ける汚れを含んでいる場合も多く、そのまま川や海へ流してしまうと、環境に悪影響を及ぼします。そういう「工場廃液」を川や海に放流できるくらいにきれいにするのが「排水処理システム」です。

排水処理が企業に義務付けられ始めたのは、工場廃液に含まれる汚染物質により、日本中で公害が発生したことが原因です。

よく知られているものだと、水俣病やイタイイタイ病など、人の命に係わるような問題を引き起こす公害が挙げられますが、そういった人体への悪影響だけでなく、赤潮の発生やアオコの発生など、生態系へ悪影響を引き起こす公害もしばしば発生しました。

単に毒性のある物質で公害が引き起こされるわけではなく、富栄養化と呼ばれる偏った栄養分が工場廃液や家庭からの廃液に含まれることなどが原因であることが分かってきたため、今では水質汚濁防止法という国の法律にも「有害物質」と「生活環境項目」という基準値が設定されています。

「生活環境項目」には、その物質そのものが有毒であるわけではないのですが、排出すると生態系のバランスを崩し、自然環境にトラブルを引き起こす可能性のある物質が定められ、その定められた物質については排出濃度等の排出基準値が定められています。

例えば、お米のとぎ汁には、体に有害なものも、生物に悪景況を及ぼすものも入っていませんが、そのまま川へ流すとなると、水質汚濁防止法の排出基準にはひっかかります。

これが富栄養化の原因の一つで、生態系のバランスを崩し、藻の異常発生など環境へ悪影響を及ぼします。

 

排水処理とSDGs

近年ではSDGsに向けて、生産活動により環境へ悪影響を及ぼすものに対して、対策を講じる企業が増えてきました。排水処理システムの設置もその一つです。

排水処理にかかわるSDGsの項目を確認してみます。

 

6番目『安全な水とトイレを世界中に』

SDGs第6の目標「安全な水とトイレを世界中に」では

2030 年までに、安全で手ごろな飲み水への普遍的なアクセスを確保するためには、インフラの整備に投資し、衛生施設を提供するとともに、あらゆるレベルで衛生状態の改善を促すことが必要です。

とあります。

これは取水する側の衛生施設ももちろんですが、その取水エリアに放出する工場に対しても、排水処理して放出することが求められているはずですから、排水処理システムは今後、世界中でニーズが高まると考えられます。

 

12番目『つくる責任つかう責任』

SDGs第12の目標にある「つくる責任つかう責任」の中には

エコロジカル・フットプリント(人間活動が環境に与える負荷を、資源の再生産および廃棄物の浄化に必要な面積として示した数値)を早急に削減することが必要です。

とうたわれています。

たいていの場合には、きれいな水を取り出すと同時に、産業廃棄物となる汚泥が発生し、その汚泥は産業廃棄物処理業者に引き取ってもらって、適切に処理してもらう必要があります。

実はこの産廃の処理費用は企業にとってコストとして大きな負担になっている場合もあり、どの工場も産業廃棄物処理費用の削減には力を入れていますが、SDGsの推進が企業に求められるようになり、さらにその傾向が加速しています。

 

14番目『海の豊かさを守ろう』

SDGs第14の目標は「海の豊かさを守ろう」です。

陸上からの排出が主原因である海洋汚染は危険な水準に達し、

とあり、私たち人類の経済活動により、海の汚染が進んでいることが問題視されています。

海洋と沿岸の生態系を持続可能な形で管理し、陸上活動に由来する汚染から守る

ことが目標として掲げられており、工場廃水を排水処理してから自然界へ返すことは、これからの企業の義務となりつつあります。

 

排水処理システムは全ての工場に必要?

私自身、この仕事に携わるまで、日本のすべての工場にきちんと何らかの排水処理システムが設置されていて、すべての工場がきれいな水を川へ流していると思っていました。

学校でも昔は汚かった川 が、工場からの廃液がどんどん処理されるようになって川の汚染もなくなってきた、と習った記憶があります。

そんなところから、もう日本では、すべての工場がきれいな水を流している、素晴らしい環境!って思っていました。

でも実は、そんなことはなくて、今でも排水処理システムを設置していない工場があります。

設置する必要がない、という方が正しいかもしれません。

もちろん、水の出ない工場もあります。生産設備に水が必要のない工場、洗浄に水を使わない工場もあるからです。

そういう生産ラインから水が出ない工場では、(下水がない場合に限られますが)浄化槽と言われる工場から出る生活排水を浄化する設備は必要ですが、排水処理システムは必要ではありません。

では、廃液が出るのに、排水処理システムを設置していない工場があるのはなぜでしょうか?

実は法律で、除外設備、いわゆる排水処理システムの設置が義務付けられているのは、特定施設と呼ばれる指定された産業設備・産業装置を持った工場だけなのです。

例えば特定施設には次のようなものがあります。

 

一 鉱業又は水洗炭業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
イ 選鉱施設
ロ 選炭施設
ハ 坑水中和沈でん施設
ニ 掘削用の泥水分離施設

 

このように、対象となる工場が定められていて、全ての工場に排水処理システムの設置が義務付けられているわけではありません。

(特定施設一覧はコチラ 👉https://laws.e-gov.go.jp/law/346CO0000000188/

 

その中でも、日量 50 t以上の廃液が出る工場では、生活環境項目といわれるBODやN-hexなど、直接人間や環境に有害な物質ではないけれど、水の環境を悪化するという理由で排出を制限する項目がいくつか定められています。

逆に言うと、この法律でのみ、すべての工場が縛られるのであれば、ディンクという会社は存在しません!

私たちのお客様はほとんどが段ボール工場で、さらにお客様に提供する排水処理設備は 0.25t(250L)~30t/日というかなり小型の排水処理設備です。

段ボールの工場には特定施設がありませんので、法律上は規制対象ではないのです。

★★★ただし!埼玉県、茨城県だけは事情が違います★★★

埼玉県、茨城県では、上記の「特定施設」にコルゲーターと呼ばれる段ボールのシートを製造する機械が指定されているために、下水以外への放流には非常に厳しい規制値が課せられます。

しかも霞ヶ浦の流域では、上乗せしてとんでもなく厳しい規制値が課せられており、中小企業にとっては厳しい立地条件になるようです。

 

では、システム導入の必要性を、次のフローチャートで確認してみましょう。

 

 

)たとえば「瀬戸内海環境保全特別措置法」や「湖沼水質保全特別措置法」など、特別な地域の排水に関する法律があります。

 

排水に関しては、このような順番で排出規制有無の確認と、その規制値に合わせて排水処理システムの必要性を確認して、規制値を元に設計を行っていきます。

時には、工場の担当者も条例の存在がよくわからない、という状況もあるので、その際には当社の社員が、その工場が立地する公共団体に問い合わせて確認を取る場合もあります。

法律、条令って、分かりにくくできてますからね ー・・・。

私たちも、日々、チェックはしているのですが、気が付かないうちに条例や法律の変更がある場合もあって、設計を見直しする必要がある、なんてことも起きてしまいます。

そのため、やはり取り締まっている人に確認するのが一番です!問い合わせた際には、電話口で回答をくださった方のお名前を聞くことは忘れずに。

あとで、聞いた、聞いてないってもめごとになるのも困るので、誰にいつどんな回答をもらったのかは、記録しておきましょう。

(問い合わせた時には○○さんが「大丈夫です」って言ってたのにー!、といったところで、義務を免れるわけにはいかないのですけどね。)

 

さて、基本的にこのフローチャートで必要な規制値が分かる訳なのですが、このフローチャートで、ピンクのところ「排出の規制値なし!」と出たからと言って、安心するわけにいかないという現状が、私たちディンクという小型の排水処理システムが得意な会社が、社会で求められている理由の一つでもあります。

このチャートだけで行くと、私たちのお客様はたいてい最後のピンクのところにたどり着きます。

 

ピンクのところにたどり着いたとしても、排水処理システムを必要とする理由。

それは「廃棄物法」です。

廃棄物法、正式には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」と言います。

👉https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137/

 

廃棄物法から抜粋してみます。

 

(事業者の責務)
第三条 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
2 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物の再生利用等を行うことによりその減量に努めるとともに、物の製造、加工、販売等に際して、その製品、容器等が廃棄物となつた場合における処理の困難性についてあらかじめ自ら評価し、適正な処理が困難にならないような製品、容器等の開発を行うこと、その製品、容器等に係る廃棄物の適正な処理の方法についての情報を提供すること等により、その製品、容器等が廃棄物となつた場合においてその適正な処理が困難になることのないようにしなければならない。
3 事業者は、前二項に定めるもののほか、廃棄物の減量その他その適正な処理の確保等に関し国及び地方公共団体の施策に協力しなければならない。

 

(清潔の保持等)
第五条 土地又は建物の占有者(占有者がない場合には、管理者とする。以下同じ。)は、その占有し、又は管理する土地又は建物の清潔を保つように努めなければならない。
2 土地の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有し、若しくは管理する土地において、他の者によつて不適正に処理された廃棄物と認められるものを発見したときは、速やかに、その旨を都道府県知事又は市町村長に通報するように努めなければならない。
3 建物の占有者は、建物内を全般にわたつて清潔にするため、市町村長が定める計画に従い、大掃除を実施しなければならない。
4 何人も、公園、広場、キャンプ場、スキー場、海水浴場、道路、河川、港湾その他の公共の場所を汚さないようにしなければならない。
5 前項に規定する場所の管理者は、当該管理する場所の清潔を保つように努めなければならない。
6 市町村は、必要と認める場所に、公衆便所及び公衆用ごみ容器を設け、これを衛生的に維持管理しなければならない。
7 便所が設けられている車両、船舶又は航空機を運行する者は、当該便所に係るし尿を生活環境の保全上支障が生じないように処理することに努めなければならない。

 

とあって、事業者は廃棄物を適正に処理しなくてはいけないですし、この国に住んでいる者すべては、河川や道路など、公共の場所を汚してはいけない、と定められています。

 

私たちのお客様のメインである段ボールの工場から出る廃液は、真っ黒だったり、時には真っ赤や真っ青だったりと、川に流れた時に一目で「誰かが何か流した!!!」とすぐにわかる廃液なんです。

皆さんも、学校の図画工作や美術の時間に絵の具を使って絵を描いたことがあると思います。

その時に、筆洗いバケツの中の水が、汚い色になるのを見たことはありませんか?

段ボール工場では、段ボールの表面に水性のインキで印刷をするので、印刷機や印判と呼ばれる印刷機材からインキの洗い水が廃液として出てきます。

それが、川や田んぼに流れてきたらどうでしょうか。多分、大騒ぎになりますよね。

(私たちのお客様でも、ちょっと処理をミスして、黒い水を流してしまったところがあるのですが・・・パトカーも消防車も来て、大変だったそうです😭)

 

そこで私たちの出番です!

色のついた汚い水を、私たちの技術で無色透明にして外へ流せる水にします。

タンクのサイズ、配管方法、使う薬品、どれもお客様ができるだけ小さな労力、小さなコストで最大限の効果を発揮できるように、組み立てていきます。

もちろん、外へ流出させないことが一番なので、様々なリスクヘッジのツールも組み込んでいきます。

そうして段ボール工場の排水処理に関わり続けることで、お客様に信頼していただいて、30年以上。

日本全国で400台以上の納入実績も積ませていただきました。

最近では、ほかの業種の工場からも、時々お問い合わせをいただいております。

段ボール工場以外でも、自分たちのノウハウが活かすことができるのが分かってきました!

 

そんなわけで、ディンクでは、排水処理についてのご相談、いつでもお待ちしております。

どんな業種の方でも、お気軽にお問い合わせください。

 

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